運動器エコー観察 03|肩峰下滑液包炎
2022年12月9日
右肩の痛みで来所された大分市在住の70代男性。
先月まで鍼灸院で加療を行なっていたそうですが、「腕が挙がらない」とお悩みでした。
とはいえ、他覚的に挙上は150°まで可能で、日常生活に大きな支障はなく最終域での運動制限と痛みが気になっているご様子です。
痛みを感じる部位を詳しく探ってみると、
「ここが痛い」というようなピンポイントでの痛みではなく、
「この辺り」と表現されるような境界が曖昧な痛みのようです。
このように、痛みの部位がはっきりしない時はエコー観察装置が大変役に立ちます。
触察・徒手検査である程度の当たりを付けてエコー観察を行ないました。
健側の左肩に比べ、右肩の肩峰下滑液包内の滑液量が増加していることがわかります。
滑液包とは、関節や筋・腱の滑走性を良くするための、いわゆる潤滑油のような役割を持つ『滑液』を生産するところ。
肩峰下滑液包の炎症(肩峰下滑液包炎)が起こると、内部に貯留している滑液の量が増加します。
つまり、炎症が起こっている時期に
「関節が硬くなっちゃう!」
と、無理な可動域訓練やマッサージなどの温熱を目的とした施術を行なうと、炎症を助長して痛みの増悪に繋がる可能性があります。
また、炎症が長期化すると、周辺の軟部組織との癒着が生じて可動域が著しく制限されて、いわゆる四十肩・五十肩と呼ばれる状態に移行してしまうことも考えられます。
今回は超音波(非温熱)で炎症の沈静化のためのフォノフォレーシスを行ないました。
エコー観察は、痛みがある部位の状態を確認して
『この時期はどのような施術を行うべきか』
といった、最適な施術方法を選択するために必要な情報を得ることができるのです。
文責
大分ごとう整骨院
院長 後藤佑輔
【保有国家資格】柔道整復師・柔道整復師専科教員・社会福祉士
【所属】医療法人社団 栗原整形外科 宏友会
日本柔道整復師会
大分県柔道整復師会
日本超音波骨軟組織学会